前回の記事で「選手が競技から長期に離れることは非常に大きなストレスで、モチベーションの大きな低下につながる」ということを書きました。
選手が競技から長期に離れなければいけない原因も様々ありますが、多くの場合は怪我によるものがあげれられます。我々理学療法士は、怪我から早期に復帰させる役割をになっているのと同時に、怪我をしづらい身体作りをすることもになっています。
今回は、指導者や保護者が選手の怪我を少しでも減らすためにできることをあれこれぼやこうと思います。
投球数が過度になっていないか
まずは投球数についてです。チームの主力投手であればあるほど大事な試合や、ここぞという場面での起用は増えます。
もちろん負けたら終わりのトーナメントを勝ち抜くためにはエースを頼りたくなるのはわかります。
ただ、学童期は特にそうですが投球数に比例して投球障害のリスクは上昇します。身体が未発達な分、骨強度が低く繰り返される投球の中で怪我をしやすくなるのです。
そのため、投手や捕手の投球数管理は怪我のリスクを減らすための手段となります。実際に日本臨床スポーツ医学会の提言も以下の通りに記されています。
日本臨床スポーツ医学会の提言
より広範な視点から、年齢別の全力投球数の目安が提言されています。
- 小学生: 1日50球以内、週200球を超えないこと。
- 中学生: 1日70球以内、週350球を超えないこと。
- 高校生: 1日100球以内、週500球を超えないこと。
- 1日2試合の登板は禁止すべきとされています。
指導者の方々は選手負担を少しでも減らせるような工夫が求められます。具体的には
- 投手を複数人育てれるようなチーム育成をする
- 練習メニューを1週間単位で作成し、選手のノースロー日を設ける
- 同学年でも成長がゆっくりな選手の運動強度に配慮する
などがあげられます。
野手がバッティングピッチャーをする際も、無制限に行うのではなく打者○名で交代や、10分で交代などの工夫をし、投球過多にならないような工夫をしましょう!
人数が少ないチームほど1選手にかかる負担は増えます。「この選手しか投手ができない、、」とならないように他選手にも投手の挑戦機会を設けてみましょう。
怪我をしやすい投球フォームになっていないか
明確に気づくことは難しいかもしれませんが、投球フォームも怪我のリスクになります。
怪我をしやすいフォームでも、怪我をしない選手もいます。また、怪我をしやすいと言われる投げ方が個性としていい点を持っているケースも時にはみられます。
怪我をしづらい=パフォーマンスが高いではないのでみんなをみんな模範的なフォームに当てはめる必要はありません。というより、模範的なフォームなんてないのです。その選手の身体的特徴や動作がフォームを作り上げるので。
その中で指導者の中で気を付けてみていただきたいのは「肘が肩よりも下がっているフォーム」と「過度にインステップしているフォーム」の2点です。
肘が肩よりも下がっている
この現象によって得られるメリットは正直思いつきません。本来は胸郭や肩の動きで大きく腕を使うのが投球動作ですが、肘が下がることで胸郭や肩が十分に動くことが難しくなります。
その結果として、肘の内側にかかるストレスが大きくなることや、上腕にかかる捻れるストレスが大きくなり障害リスクが上がってしまうのです。
過度にインステップしている
インステップとは軸足に対して踏み込み足が内側に入ることです。足がクロスするような形です。
これは打者から見た時に角度がつき、打ちづらいというメリットになり得ます。しかし、胸郭や下肢柔軟性など身体要素が伴わなければ障害リスクとなります。
線上に軸足を置き、踏み込み足を出す練習でインステップの修正は比較的簡単に取り組むことができるので、ぜひ試してみてください!
適切な休養が取れているか
最後は休養です。練習で疲れた身体をいかに休めて回復させられるかは怪我のリスクに直結します。
十分な栄養を取れているか、睡眠時間は確保できているかは保護者の方々の協力も必要です。この辺は以前記事にまとめたものがあるので、そちらを参考にしてください。

以下に簡単にまとめます。
- 食事
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- 食事間の時間は5時間以内に、必要であれば捕食を準備
- 可能な範囲で栄養素のバランスを整える
- 食事が楽しくない、とならないように好物を入れる
- 飲み物にはミネラル分を含んだものにする
- 睡眠
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- 部屋はなるべく暗くし、静かな環境にする
- 室温は22℃〜25℃、湿度は60%前後に設定する
- 寝る時間と起きる時間をなるべく固定して、体内時計を整える
まとめ
怪我をする時はしてしまいますし、完全に防ぐことは無理です。でも、怪我をしないように努めることは今からでも可能です。
選手がのびのびと野球をできるように、怪我で長期間プレーから離脱しないように指導者や保護者の皆さんの協力と少しの工夫が必要です。
ぜひ実践してみてください!