これまで野球肘や野球肩などの「投球障害」に関わりながら、自分自身もより良い治療がで提供できるようにと思い色々な勉強をしてきました。今は自分が勉強しながら、他スタッフに向けて「投球障害の治療」について伝達する側になりアウトプットする機会が増えてます。
その中で最近感じるのは「治療技術を学ぶことに固執しすぎじゃない??」ってことです。確かにどう治療すれば良いかわからないから、手技手法を学びたいと言う気持ちは理解できなくはないです。しかし、治療するにしても「何に対してアプローチするか」が間違っていては効果は出ませんし、どうプランニングしていくかがわからなければ「治療の優先順位」が決められません。
治療手技を学ぶよりまず優先すべきなのは、どれだけ正確に「症状に対する見立てを立てられるか」と「どう復帰までをコーディネートしていくか」を自信を持ってできるようになるかが大事です!

本日のお品書き
投球障害に関わる上で優先的に学ぶべきことは「見立てと評価」
これは投球障害だけではなく、セラピストとして対象者に向き合うために必要なことと言えることかもしれません。まず優先すべきものは「症状に対する考察をいかにたてれるか」です!
どのような治療手技を用いるかよりも先に、一つの症状に対して「どのように見立てを立て、その見立てに整合性を持たせるためにどう評価をするか」を学ぶことがまず大事なのです。
なぜなら、治療は最終的な段階なので。理学療法士の方々ならば学生時代に一度は勉強しているはずです。基本的な介入手順は以下に記します。
- 情報収集
- 分析と考察
- 目標設定とプログラム立案
- 介入
- 再評価
みてわかる通り、治療手技や技術などは④の介入にあたり、その前の①〜③が変われば変動する要素です。
いくら治療法を多く持っていても、使い方がズレれば効果はでない!

どれだけ治療系のセミナーや勉強会に参加しようが、そこで身につけた治療を活かせるだけの評価をできなければ意味がありません。水タイプの敵に炎の攻撃をしても効果がいまひとつになりますよね。それと同様で「評価と見立て」が間違っていれば肩に原因があるのに、一生懸命に肘に対して治療してしまってるのです。それじゃ意味がありませんよね。
確かに、自分のポケットの中にたくさんの技を詰め込んでおけばいざという時に役にたつことはあると思います。でも、その技を十分に使いこなすには技の効果が出るかどうかの判断ができなければいけません。つまり「症状に対して、適切な評価と見立て」ができなければ、せっかく時間とお金をかけて学んだ治療手技を活かすことはできないのです。
目指すべきは疼痛改善ではなく「満足できる投球ができるかどうか」
ここまで、なぜ「評価と見立て」が大事かを述べてきましたがこれはあくまでも、一般的に言えることです。今回のトピックは「投球障害において」がテーマなのでもうひとつ踏み込みます。
投球障害に関わる上で念頭に置かなければいけないのは「痛みをなくすこと」ではなく「満足いく投球ができるか」を目標にする必要があるのです。ただ痛みがなくなるだけではダメだし、競技復帰に至る段階でパフォーマンスレベルが低ければ出場機会が減ってしまいます。
そのため、競技復帰までにどれくらいの期間を要するのか、練習参加はどの段階で始めるのか、逆に離脱期間はどれくらいなのかなどを可能な限り明確に選手や指導者に提示する必要があります。
ここに関してはエビデンスに基づく見解も大事ですが、やはり経験や自分自身のこれまでの感覚に基づくものがより必要になると感じています。今までの経験を交えて話すことにより選手や指導者側は、実例がある分納得しやすい印象があります。もちろん、全て自分の感覚任せはダメです!

目標到達が遅れれば選手側の焦りにつながる
競技復帰時期を設定する場合は、「最短と最長を提示すること」と保存治療を選択した際の「選手予後や手術の有無」を説明する必要があります。
目標設定をして治療に臨んだ際に、実際の治療期間や離脱期間が長引いた際の心身ストレスはとても大きいです。それが影響して、選手が過度に復帰強度を高めてしまうと症状が憎悪し、復帰タイミングがどんどん遅くなることも考えられます。
このようなことから、いろいろなケースを踏まえた上で、最短と最長でどれくらいかかるのかを明確にした上で選手と目標設定をすることが必要になります。
また、手術などをせずに競技復帰をしていく中で予後として、どういう症状が出れば手術になるのか、選手生命に影響するほどの怪我なのかなどを事前に伝えることも必要と考えます。
選手自身がどこまで競技を続けていこうと考えているのか、どの職業を目指してそれに差し支えがないのかまで含めて説明する必要があります。
まとめ:適切な評価ができた上で、明確な目標設定ができるようになれ!
治療ができることはもちろん大事ですが、その治療効果を最大限にするために必要なのが「見立てと評価」になります。何が原因で痛みが出ているのかと、それを裏付けるためにどう評価するかをまずはしっかりと学びましょう!
また、治療を進めていくにあたって復帰時期を自信や根拠を持って明確に提示できるようにしましょう。現場で選手や指導者側が欲しているのは「どこまでやっていいのか」や「どれくらいで復帰できるのか」です。そこではっきりと答えられるようになるために、必要な知識や考えかたを学び、現場で求められる存在になりましょう!