今回は投球動作における「トップ」に対する私の意見をあれこれ述べたいと思います。なぜこの記事を書こうと思ったかというと、今に始まったことではありませんが「トップを作る」という言葉が逆にトップを崩すと思ったのがきっかけです。
というのも、私は理学療法士を始めた1年目から投球障害に向き合ってきました。私自身も小学生から野球を始め、現在に至るまで趣味程度ではありますが野球を続けています。私の周りの人も、リハビリで関わる人も投球障害に悩む人はたくさんいます。
その中で多くの人に共通しているのが「トップを作る」ことに対しての意識が強い印象を受けます。また、競技現場の中でも指導者から「トップを作ってから投げなさい!」なんて言葉をよく聞きます。
でも実際って「トップは通過するもの」だと思うんですよね。あくまで投球動作は一連の流れであるため、「トップ」と言うのは、投球動作の中で通過している一部分にフォーカスしているだけの用語だと捉えています。だから、作ろうと思って作るものではないのです。
あくまでも「トップは通過するもの」であるため、必要なのは作ることではないです!必要なことはいかにスムーズに「トップを通過」するための連動性を作れるか、です!

「トップ」は投球動作の一連の流れで通過する一点をフォーカスしたもの!
「トップ」は基本的にコッキング期が終わり、加速期に移行するタイミングの中にあります。テイクバックが終わり、腕を振りはじめるタイミングです。もう少し簡単に言うとボールが後頭部周囲にくるタイミングです。
オーバースローやサイドスロー、アンダースローなど投げ方は様々ありますが基本的な動きは変わりません。変わるのは体幹の横に倒れる角度とそれに伴う腕の軌道です。
サイドスローやアンダースローはリリースやトップが低く捉えられがちですが、実際には体幹と腕、ボールの関係性はどの投げ方でも大きく変わりないのです。
「トップ」の一部分にフォーカスして、作る意識が強くなってしまうと、手をあげることに集中してしまい前の動作にブレーキがかかるか、投げ急いでしまいます。
捕球から送球の流れの中で、意識しなければいけない事は多くあります。そんな中でいちいちトップを作らなけらばなんて気にしてられません。
トップを作ることを考えると、急いでボールを高く上げようとすることも少なくないので、スムーズな動作を阻害します。
ピッチング動作では、腕をおろしてから上げてくる動作の中で急いで上に上げたり、上げたタイミングで力が入ってしまうと肘や肩にかかるストレスが増えてしまいます。
このように、トップを作ることを意識することは動作の連動性を阻害し、パフォーマンスを下げることや怪我のリスクにつながります。もう一度言いますが、大事なのは「トップを通過する」感覚が大事なのです。
スムーズにトップを通過するために
スムーズにトップを通過するために必要なのは「連動性」です。そのため全身的なアプローチが必要となります。
守備での送球にせよ、ピッチングにせよ始まるのは脚の動きからです。そのため股関節や足関節の可動性の動きが重要になります。
下半身の十分な可動性が確保されていなければエネルギー伝達は不十分となり、上半身で補わなければなりません。そうなると、腕や肩に余計な力が入りスムーズな動きは難しく力任せな投げ方になりやすいです。
下半身だけではなく、胸郭の動きや上半身と下半身をつなぐ体幹部の筋力も同様に重要になります。
基本的には全身動作になるため「これをやればいい!」みたいなのは無いんですよね。柔軟性を獲得してスムーズな動作ができる必要があり、自分のもちあわせている可動域を十分に使いこなせるだけの筋力が必要になります。
それだけではなく、自分の持っている体力に合わせて動作を反復する必要があります。
いくらストレッチやドリルをしようが、理論を学ぼうが、実際の競技練習をしなければ身体には定着しません。当たり前のことですができていない選手も多いものです。
競技練習時間が十分では無いのに結果が出ない、成果が出ないと嘆き次々違うことに取り組む選手も見受けられます。
大事なのは自分自身の体力を向上し、その体力に応じたスキルを磨くことです。
- ストレッチやドリルで必要な可動域を確保
- 動作を遂行するために必要な筋力を獲得
- 投球動作のための姿勢制御の学習
- ピッチングや送球練習により動作の反復
まとめ
投球動作における「トップ」は重要な役割を果たします。そこに重きを置くことは必要な要素と考えます。
ただ、その際に「トップを作る」ことを考えてしまうと逆にトップを崩しやすくなることも多いです。
そのため必要なのは、自分自身の身体に必要な体力を身につけ、動作を確認し反復することにより「トップをスムーズに通過する」動作を定着させることです。
少しの変化で動作が変わるきっかけを掴むこともあります。この記事を読んでくれた方のきっかけになれば幸いです!