患者:腰上げをするともも裏がいつも攣るんだよ〜
セラピスト:水分しっかり摂りましょうね!
確かに水分不足によって引き起こされる、攣る現象(筋痙攣)もあります。しかし、特定のケース(今回は腰を上げる運動、ヒップリフトをする時)で攣るということは、何か運動方法に原因があるということも考えられます。
治療家として、専門職として目の前の現象に対して何が起きているか、どうすれば改善できるかを考えることは重要です。一言で済ませるのではなく、どうすれば改善できるかを導いてあげれるようになりたいですよね。
今回のケースに関しては「運動フォームのエラー動作で、もも裏の筋肉(ハムストリングス)に対する負荷が過剰になり攣ってしまう」を前提に考察しようと思います。

本日のお品書き
攣る原因は、運動不足や水分不足など多岐にわたる
そもそも攣る(筋痙攣)の原因に何があるのかを先に説明します。と言っても、現時点での研究結果を見ても確信的な要因は見つけられません。あくまでも、可能性がある要素として取り上げます。
- 筋肉への過負荷、疲労
- 筋肉のコンディション
- 脱水
- 電解質異常
- 内服薬の副作用
- 基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患など)
現時点で私が挙げられる要素は、上記6点になります。今回は、基礎疾患がない方が運動時に攣ることにフォーカスして考えるため①〜④を取り上げて説明していきます。
①筋肉への過負荷、疲労
筋肉の収縮に関与する器官として、筋紡錘とゴルジ腱器官がよく取り上げられます。
筋紡錘:筋腹に多く存在
筋肉が急に引き伸ばされた時に、過剰に引き伸ばされて損傷するのを防ぐために瞬間的に収縮する働きがある
ゴルジ腱器官:腱実質に多く存在
筋肉に過剰な力がかかる際に、筋肉を弛緩させる働きがある
本来であればこの2つの器官がバランスよく活動することで、筋肉の収縮と弛緩のバランスをとっています。しかし、本人の能力以上の力が要求された時や、筋疲労状態が過剰なケースではバランスが崩れて攣りやすくなってしまうのです。
②筋肉のコンディション
筋肉のコンディションでも特に、短縮位にあることが挙げられます。短縮位とは、筋肉の張力が低下しており、本来の筋肉の長さよりも短い状態を指します。「攣る」という現象は、基本的にこの短縮位でしか確認されません。
①の項目にある筋疲労の状態もコンディションに含まれます。筋肉がたくさん使われたあとには代謝産物が生成されます。この代謝産物が神経に触れることにより、神経の伝達異常が引き起こされて攣りやすくなるという可能性が挙げられます。

③脱水、電解質異常
最後は、脱水と電解質異常です。「攣るのは水分不足だ」というのは良く聞いたことがありますよね。ただ、単に水分を摂るでは改善策にはなりません。それに、水分を過剰に摂取しすぎるのは浸透圧の調整により、電解質を排出することにもつながります。
単に水分を摂取するのではなく、意識的に電解質を含んだ水分を摂ることが重要です。具体的には麦茶やスポーツドリンクなどが挙げられます!
しかし、とある研究では脱水や電解質異常は攣る原因にならない可能性も示唆されています。気になる方はこちらの記事を読んでみてください!
腰上げでなぜハムストリングスが攣るのは過剰な収縮が原因!
では「ヒップリフトでハムストリングが攣る」のはなぜかを考えます。※事前の水分・栄養状態は不足がないことを前提に話を進めます。
上で説明した原因の①と②の要素、つまりは、腰上げをする際にハムストリングスが必要以上に収縮をしなければいけない状況を強いられているのではないか、という可能性が考えられます。
ヒップリフトは、身体の後面筋をメインターゲットにして行なっている運動です。ハムストリングスと協働して、広背筋や大臀筋、下腿三頭筋等も同時に収縮していると考えられます。例えば、ハムストリングスと同様に股関節を伸展する作用の大臀筋が弱ければ、それを補うようにハムストリングスが過剰に収縮しなければいけません。
他にも開始肢位に原因がある可能性も考えられます。
- 膝の曲がりが深すぎる、もしくは浅すぎる
- 腰の反りが強い
上記のような状況では大臀筋が働きづらい、もしくはハムストリングスが優位に働きやすくなってしまいます。
膝の曲がりが深いとハムストリングスは短縮位になり、攣りやすい状態から運動を始めることになります。
膝の曲がりが浅い、腰が反りすぎるとハムストリングスの筋張力が上がり筋発揮がしやすい状況になります。さらに、ハムストリングスの長さが大臀筋よりも長く遠い位置になるため、テコの原理で優位に働きやすくなるのです。
2025/9/12追記
ハムストリングスの大臀筋の機能不全によるハムストリングスの肉離れはスポーツ現場でよく見受けられます。この記事の後にそのようなケースについての記事を作成したので、合わせてご覧ください!

腰上げ(ヒップリフト)をする際の工夫
では、ヒップリフトの際にハムストリングスが攣るのを改善するためにはどうすれば良いのか、です。
1つは大臀筋が活動しやすい状況を作ることです。
- 大臀筋に収縮が入りやすいように、お尻の穴を閉める力を入れながら恥骨を持ち上げるように動作を行う
- 膝の角度を100-110°に設定する
もう1つは腰の反りすぎを抑えるために、動作時にへそを覗き込むようにしたり、ブレーシングをしたりなどの方法が挙げられます。
そのほかにも、準備運動として軽負荷かつ高頻度で膝曲げの運動をする、事前にハムストリングスのストレッチをするなんていう方法もありです。
まとめ
「攣る」という現象で良く言われるのは「水分不足」ですが、その他にもたくさんの要素があります。
- 筋肉への過負荷、疲労
- 筋肉のコンディション
- 脱水
- 電解質異常
- 内服薬の副作用
- 基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患など)
ヒップリフトをした時に攣る患者さんが居た時は「水分不足ですね」の一言で済ませるのではなく、なぜ攣ってしまったのかを考えてみてください。きっと、運動方法自体にエラーが隠れているはずです!
今回はそんなエラー動作の中で考えられるものを、いくつか紹介しました。ぜひ皆さんの運動処方に役立ててもらえればと思います!
